デザイナーズコラム

音で感じる季節

■デザイナー's コラム
『音で感じる季節』
【ザ・シーズン仙川/押久保 昇一】2003年4月
屋根の上のクヌギです。いろいろとやってくれます。

 いろいろな花がそこここに咲き乱れ、春も盛りとなってきました。これから庭仕事などで忙しくなる時期です。

 「サワサワサワ」 「ザァァーツ」 「コーンッ」 「シーーン」
  「ジーッ ジーッ ジーッ」  「チッチッ」

庭での空間を楽しむ・味わうといったときに、私たちは視覚や触覚といった五感を使っていろいろなことを感じ取っています。私は昨年秋よりここザ・シーズン仙川の店長を務めており、今回は「音」を通じて季節を感じたことをいくつか記したいと思います。

 まずはここのお店の立地状況から。このお店は住宅地の中の総合住宅展示場の中にあり、嬉しいことに目の前にサクラが2本・裏に高さ15mはあろうかというクヌギが3本ほど(こちらはあまり嬉しくない理由もあり、後日記します)植わっています。裏は坂になっており、その下には幅5mほどの仙川が流れています。そのためか、風が強い日には余計強く風が当たります。
敷地内には、開放的なリゾート感覚の15坪平屋の店舗と、芝生・石張りテラス・白い漆喰の壁を基調としたシンプルな庭があります。
夕暮れ時の庭。遠くから、近くから虫たちが鳴き始めます。店のエントランス。コンテナに植わったコルジリネ・アトロプルプレアのエンジの葉がゆっくりとなびくくらいの風が気持ちいいです。(10月)
テラスのベンチ。ゆったりとくつろげます。
 私達デザイナーの仕事は接客からプランニング・施工管理までいろいろとすることがあり、朝早くから夜遅くまで店舗にいることがあります。(今日の施工現場の資材準備や明日の打合せの図面書き、などなど)
そのときにここで聴いた「音」達です。
 
 情景(1) 「ジーッ  ジーッ  ジーッ」
 虫の音です。
9月14日にこのお店がオープンした頃は、夜一段楽して庭のベンチでひと休みしていると、うるさいくらいに虫たちが鳴いています。目を閉じて耳を澄ますと多重奏のように聴こえてきます。そんな時、虫たちも頑張っているな〜、と思ったりもします。
庭に落ちて根が出たコナラの実です。順調に何十年かすると大木になります。(残念ながらこの実は店内に落ちてしまったので、そのうち私が抜きます。)これが夜中、屋根に落ちて私をびっくりさせるドングリです。
 情景(2) 「コーンッ」
 ドングリが屋根に落ちた音です。 
 虫たちの競演が終わる10月になると、夜のお店は静かなものです。店の回りも真っ暗で、コピー機の電源も節約モードになると本当にシーンとしてしまいます。
プランニングに集中しているそんな時に、ドングリが落ちてきて「コーンッ」と私をビックリさせるのです。それと同時に、むかし親の田舎で寝静まったときに同じ音色がしたなあ〜、と感慨にふけったりもします。
 情景(3) 「シーーン」
 雪が降り積もったときの音です。
 この冬は寒く、ここ東京調布でも何回か雪が積もりました。そんな日には人通りもなく、まずお客様は来られません。窓の前の芝生の上は、雪で真っ白です。少し童心に帰って足跡を付けてみたくなります。
一歩、二歩、三歩。雪が積もった庭の中央に立ちました。
「シーーン」
10年ほど前に、人気のない長野のスキー場で雪の上に寝そべった時があります。
そのときと同じような「音」のない時でした。
 
情景(4)  「サワサワサワ」 「ザァァーツ」
草木がそよぐ音です。
風の強さによってなびくものが変わってくるので、音が変わってきます。
5月や9月のやや暑い宵っ張りに、風速数メートルのそよ風に吹かれながらビールでも飲みながらくつろぐのは最高です。(もちろん勤務中はビールは飲みません。)
その時に、こういったそよぐ音達がBGMとなるのです。
イヌシデの雑木林。これだけ木があると風の強い日はうるさいくらいです。サクラとヒュウガミズキ。咲き乱れるヒュウガミズキ。音とは関係ないですが、見事に咲いていたのでついつい写してしまいました。和洋どちらでも、病害虫にも強く、お奨めの木です。
この半年、私がこのお店で聴いた「音」のことをいくつか書きました。家にいて「音」を感じるには、窓を開けたり(特に最近の家は防音性が高いので)、室外で過ごすことが必要になります。それと共に「心」に余裕がないと様々な「音」を感じ取ることができません。
私達にも言えることですが、小さなこと・ささやかな事を感じ取れる「ゆとり・余裕」を持っていたいものです。
公園の噴水です。個人邸でも壁泉や水の流れを作ることによって視覚のみならず、耳で水音を楽しむことができます。菜の花も畑ほど広くなると、サワサワサワと風にそよぎます。

▲ページトップへ