デザイナーズコラム

キャメロンハイランド訪問記



■デザイナー's コラム
『キャメロンハイランド訪問記』

【ザ・シーズンららぽーと柏の葉 担当/鈴木 加代子】2007年4月【ザ・シーズンら らぽーと柏の葉のページへ】
 


はじめに
私はアジアのランドスケープに興味を持ったことがきっかけで、2003年から3年と3ヶ月の間、シンガポールにあるランドスケープデザインオフィスで働いていました。 その間、休暇を利用して、近隣のアジア - タイ、ベトナム、インドネシア、カンボジア、マレーシアなどへ旅に出かけました。多くの美しい場所にめぐり合いましたが、今回はその中でも特に印象に残った場所のひとつを紹介したいと思います。マレーシアにある高原避暑地であり、野菜や花、特に紅茶の産地として知られるキャメロンハイランドです。



旅のはじまり
常夏のシンガポールを、夜10時ごろ出発。コーチと呼ばれる大型バスに乗って約8時間、マレーシアを南へ走ります。早朝5時のクアラルンプールでミニバンに乗り換えて約3時間、日光いろは坂のような急な山道を登ります。長時間のバス移動は少し身体にこたえます。旅行資金が豊富ならば、クアラルンプールからヘリコプターで飛んで30分程度で着くそうですが・・・致し方ありません。

さて、ミニバンで山道を登っていく間に、次第に気温が下がってきます。 クアラルンプールを出たときは暑くてクーラーを強くかけていたのが、到着前にはクーラーを消して窓を閉め、それでも寒くて上着が必要な程の冷気を感じます。 窓越しに熱帯雨林の景色を見ていると、フェーンパームと呼ばれるシダ状の葉が特徴のヤシの木が生い茂っています。その他熱帯植物も豪勢に生えているのに、とても今マレーシアにいるとは思えない、ひんやりとした空気が漂ってきます。



キャメロンハイランド
ここで、キャメロンハイランドの歴史についてお話します。
キャメロンハイランドはマレーシアがイギリスの植民地であった時代に高原避暑地、そして紅茶や花、野菜の産地として開拓された場所です。当時のイギリス人によって多くの別荘が建てられ、その一部は現在もホテルとして使われています。今も多くの観光客が避暑に訪れ、日本人には「マレーシアの軽井沢」とも言われる程、気候のいい場所だそうです。
ちなみに、タイのシルク王として知られた米国人ジムトンプソンが謎の失踪をとげた場所としても有名です。松本清張がこの事件をモデルとした小説「熱い絹」を発表しています。私はキャメロンハイランドに向かう道中にこの本を読みました。キャメロンハイランドの地理や歴史にも詳しく触れていますし、未だに解けない謎はとても興味深い。ミステリーの地へ足を踏み込んで行くスリリングな気分のまま、私は車を降りたのでした。



お茶畑
キャメロンハイランドに到着してまず圧倒されるのは、山裾一面に広がるお茶畑です。イギリスのBOH TEAと呼ばれるブランドはここで生産されているものです。熱帯にも関わらず海抜1300から1800メートルの高地に位置するため、年間を通じて平均気温21度、朝晩には霧が出て湿度が保たれる気候が、良質で安定した茶葉を生産できる要因だそうです。夜、村の市場では野菜も売られています。白菜、キャベツ、大根と、買って帰りたくなるような高原野菜の数々が並んでいました。



四季咲きの楽園
いくつもある植物園に行って驚いたのは、 ツツジ、アジサイ、カンナ、アサガオ、ヒマワリ、バラ、コスモス、キンモクセイ、ツバキ、サザンカ、サボテン、多肉植物、ブーゲンビリア、ヤシ、針葉樹・・・その他数え切れないくらいの日本各地で見られる植物や南国植物がそろって花開いていることです。一歩林に入れば、野性のランもあちこちに顔を出しています。 映画「千と千尋の神隠し」で、日本の四季の花々が同時に咲き乱れている不思議なシーンがありましたが、まるでそんな世界に迷い込んだような気持ちでした。
四季咲きの楽園


イギリス式庭園
キャメロンハイランドのホテルの中でも格別美しいのがオールドスモークハウスです。建物は1939年に建てられたクラシックなチューダー式建築で、イギリスのラッフル一族が経営している高級ホテルです。
私たちはロビーにてお茶とスコーンを頂き、お庭を見せて頂きました。

古い建物につる植物を這わせ、淡い色彩の花々が繊細に寄せ植えられています。まるでイギリスの田舎に来たような錯覚をしてしまうような美しい庭でした。
その庭には山を降りたマレーシアやシンガポールでは見られない園芸品種も多く飾られていました。イギリスや他の国から運んで来たのでしょうか。寒さの厳しい土地でも美しい庭を創造するイギリス人ガーデナーにとっては、年間を通して温暖でどの土地の植物でも育つことのできる環境は、まさに桃源郷だったのでしょうね!



周辺の集落
夢のような景色の広がるキャメロンハイランドですが、周辺の国道沿いの熱帯ジャングルには一部の先住民族オラン・アスリが、今も電気と水道のない中暮らしているという現実もあります。広大なお茶畑では多くのインド系、マレー系労働者が早朝から働いています。そして、茶畑の合間に点在する花園や果物園、ホテルを各国の観光客が巡り、現地のマレー人が観光ガイドとして案内しているのです。文化や生活、立場の違う人々のバランスがこの土地を成り立たせているのだ、ということをつくづく感じました。



さいごに
以上、私のキャメロンハイランド訪問記でした。 その魅力を、少しでもお伝えすることができれば幸いです。 「旅とは最高の教養である」という言葉を聞いたことがあります。 これからも新たな発見をし、感性を育てていく糧となるような旅を続けていきたいと思っています。

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